【FY10 振り返り】 back check 事業部 「時代の転換点を創る」ための基盤をつくる
はじめに
本記事をご覧いただきありがとうございます。株式会社ROXX back check事業部CEOの須藤と申します。2023年の1月にback check事業部のCOOとして入社しまして、同年6月からback check事業部の事業責任者をしております。
簡単に経歴を申し上げますと、青山学院大学 経営学部卒業後、 2001年に株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に入社し、営業マネジャー、DODA事業の関西支社ゼネラルマネジャーを経て、2012年から株式会社インテリジェンスHITO総合研究所(現パーソル総合研究所)執行役員に就任して、新規事業の立ち上げを行いました。その後、2015年にアマゾンジャパン合同会社にて、マーケットプレイス事業企画部部長とシニアプロダクトマネージャーを歴任、2018年にはグーグル合同会社に入社し、広告営業本部 新規顧客開発本部 統括部長として、Goole広告の新規顧客の獲得を担当しておりました。2021年には17LIVE株式会社に執行役員として入社し、グローバルマーケットの経営並びにプロダクト開発等を担当しておりました。現在、ROXXでの職務に加えて、株式会社これからの社外取締役も務めております。ROXXに入社した経緯は以下に詳しく記載しておりますので、もし宜しければご覧下さい。
入社後のback check事業部の状況
創業者でありback check事業責任者であった山田から、どこかのタイミングで私が事業責任者の役割を引き継ぐ前提で入社しました。当初はマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、パートナーセールスといった、営業関連部門を担当するところから業務をスタートしました。
それまでのback check事業部の戦略は「エンプラ戦略」と言いまして、大手企業を中心に新規顧客を開拓するという方針に基づいて運営されておりました(詳細は以下noteをご覧下さい)。
私自身は前職の17LIVEもそうですし、新卒で入社したインテリジェンスも現在のROXXに近い従業員規模でしたので、「こういう部分は出来ていないのだろうな」「こういう部分が出来ていたら凄いな」と想像して入社しました。大きな想定外の出来事はありませんでしたが、事業を成長させていく上で特に以下の3つを整えていく必要があるなと思いました。
1)組織運営の基礎・土台
山田がback check事業部の事業責任者に就いたのは2021年9月なのですが、これはback check事業の成長が止まってしまうリスクもあり、緊急の立て直しが求められるという背景がありました。
人やリソースも潤沢でない中で、自分で全てを掌握して判断するという働き方をしてきたのだろうなと、仕事をしていく中ですぐに想像がつきました。例えば、私が入社するまでは事業部のマネージャー会議は存在せず、各マネージャーと山田で話をして意思決定するという仕事の進め方をしていました。結果として事業は再び成長軌道に乗りその決断は素晴らしかったと言えるのですが、ここから事業を更に伸ばしていこうと考えると、どう考えてもこの組織運営体制に無理があるなと思いました。
事業部内のあらゆるものを整理し、プロセスを整備し、各グループのミッションや目標を適切に行う等、誰が事業責任者になったとしても円滑に事業運営を行うために必要な組織運営の基礎・土台をつくる必要がありました。
2)判断基準
2つ目に気づいたのは「判断基準」が曖昧な状態かつ組織に浸透していないということでした。
最近は「OODAループ」という概念も広く共有されていますが、事業責任者や管理職が全てを判断して行動に移すのではなく、状況を踏まえて最前線の人が判断して行動するケースも増えていると思います。
ROXXにもROCK / BAND / SHOWというValueや、Tuningという行動指針が存在しているのですが、これらが実際の業務における判断基準となっていない、あるいは、それらと反するような判断をしているケースも垣間見られる状況でした。ROXXのTuningに記載されている内容は、世の多くの企業でも求められる普遍的に必要とされる行動・思考様式(コンピテンシーのようなもの)なのですが、その体現レベルも向上させる必要があると強く感じました。
その中でも特に気になったのはチーム内に流通するテキスト・会話の大半を占めるのは「自社の成長・目標達成・受注」に関するものが多く、「お客様の状態・不満・ニーズ・満足」の分量がまだまだ少ないと感じた事です。ここは最も意識して変えていく必要があるなとすぐに感じました。
3)チーム
簡単にいうと「チーム」になりきれていないと感じました。
チームとは「目標が共有されており」「目的の達成のために協力する意思があり」「円滑なコミュニケーションが取れる」ことが条件かと思いますが、「back check事業は何のために存在しているのか」が各チームによって理解や意識すべきポイントが少しずつ異なっているため、「そのために各チームが協力して達成しようと考えて」「円滑にコミュニケーションが取れている」とは言えない状態でした。
「個人商店の集まり」では無いですが、各チーム・個人が自分の責務を果たしたら組織のゴールは達成するという前提が強く意識されており、どこかのグループで上手くいっていないことがあったり、困っている人がいた際に、その事実や状況に対して強く出てしまうシーンが多くなりがちであるというのが実情でした。過去には自分もそのようなスタイルで仕事をしていたなということもありましたが、チームとして1+1が2以上になるようなパフォーマンスは発揮出来ないと認識しており、ここも整えていく必要があると思いました。
これからやっていきたいこと
ROXXではこの10月に創業してから10周年、第11期を迎えました。6月に事業部CEOに就任後、Manager陣と中期経営計画・事業戦略について検討を進めて参りました。今回のnoteでは、そのアウトラインだけご紹介したいと思います。
その前に、back check事業部で7月に行ったキックオフミーティングで共有した「5つのプリンシプル」について触れたいと思います。これらは「私がこれまでの経験から重要だと思っていること」の中から「現在のback checkに必要だと思うもの」をピックアップしたものです。今回策定した戦略はこの5つのプリンシプルを基にしています。
1)「組織力」「組織文化」が非常に大きな競争優位性となる
過去に働いたインテリジェンス・Amazon・Googleで学んだことの1つですが、目に見えないものである「組織力」「組織文化」が非常に重要だと考えています。同じビジネス(モデル)やスポーツを行っているにもかかわらず、組織(チーム)で全く異なるパフォーマンスとなるのはこの「組織の力」に差があるからだと考えています。
例えばAmazonにはOLP (Our Leadership Principles)という行動指針があるのですが、1番目にはCustomer Obsession(顧客志向)が掲げられています。「地球上で最もお客様を大事にする会社になる」ことを目指すAmazonでは、このCustomer Obsessionを基にして仕事の判断を行うことが世界中の社員に浸透し、徹底されています。
行動指針を徹底するという「組織の力」が、Amazonの驚異的な成長を支えてきたのは間違いありません。目に見えないからこそ非常に難しいのですが、組織の力をどう高めていくかが非常に重要だと考えています。
2)「継続力」「努力」が大きな差となる
仕事だけでなく色々なことに通じる話ですが、「継続して努力する」ことが個人・組織のどちらにおいても非常に重要だと考えています。
特にスタートアップでは瞬発力高くスピード感を持って対応する事が求められるように思うのですが、個人的にはそれ以上に重要なのは高いレベルの努力をどれだけ継続できるかだと考えています。特に「短期的に目に見える成果に繋がらない」が、「中期・長期でみると大きな差となること」にどれだけ時間を使い継続できるかが、がポイントだと考えています。
3)お客様(市場)から支持いただける価値をつくる & 4) 顧客満足を上げて売上を伸ばすという価値観・事業運営に変革する
色々な業界・会社・商品・サービスの歴史を勉強すると、「市場や顧客が商品・サービスに価値があるかどうかを決める」というシンプルかつ普遍の真理に気付かされます。
しかし、ビジネスを行っていると自社の経営計画や営業目標がいつの間にか最上位の優先順位となり、売上目標を達成するためにどの顧客を獲得するのか、クロスセル・アップセルするのか、という思考回路で仕事することがあるかと思います。
私もそのように仕事をしていたことがありましたが、Amazonで仕事をしてから気づいたことは、お客様が支持する・満足するメカニズムを構築すれば、売上は勝手に伸びるというシンプルな図式です。お客様が満足しない・支持しない理由は自社にあるのかもしれませんし、社外にあるのかもしれません。ただ、そこにこそビジネスチャンスやイノベーションの種があるように思います。
5)プロダクト=お客様の体験価値を根本から見直して向上させる
プロダクトというと「システム」や「機能」のことだと理解している人もいるかと思いますが、私はプロダクトとは「お客様の体験価値すべて」だと考えています。
例えばAmazonには1クリックでお買い物をするという機能があります。こういう便利な機能を実装することは顧客満足を高める上で重要ですが、Amazonに来ると「他のお店では売っていない商品が揃っている」「買いたいと思う商品の在庫がAmazonには必ずある」という体験価値も、便利な機能と同じかそれ以上に重要かと思います。仮に「品揃えが豊富でない」「買いたいと思った商品の欠品が多い」という体験が続けば、お客様はがっかりして、Amazonに来訪する頻度は減っていくことになると思います。
プロダクトマネジメントは、機能やシステムだけでなくお客様が体験するもの全てを守備範囲とすべきと考えるのは、Amazonでプロダクトマネジメントをしていた際に上記のような思考回路で仕事をしていた影響が大きいかもしれません。
また、お客様が体験するもの全てが重要であると思考の枠組みを変えてみると、自社の商品・サービスは顧客に貢献できているのか、あるいは、顧客の問題や課題を解決しているのか、ということも気になるかと思います((3)と(4)の話に通ずる)。
さて、これまでにご紹介した内容を踏まえて、back check事業部の戦略を策定しました。そのアウトラインは以下の通りです。
FY11期はシンプルに「組織としての土台」を作り「顧客志向を追求」して「次の成長ドライバーを生み出す」ことをやっていきます。
各項目の詳細説明については省略しますが、「組織としての土台」と「顧客志向」については、前述してきた問題や課題に取り組むという内容になっています。成長ドライバーについては本稿では触れておりませんが、これまでの「エンプラ戦略」だけでは限られたお客様にしか貢献できないことが市場調査からも分かっており、多様なお客様に貢献できるような事業に進化させていきたいと考えています。
さいごに
最後になりましたが、ROXXでは「時代の転換点を創る」ことをミッションに掲げていますが、「時代の転換点」を創るのはとてつもなく難しく、また、時間もかかるだろうなと考えています。
スピード感を持って仕事をするのは大切なのですが、「ローマは1日にして成らず」という言葉から学べることがあるかと思います。
例えばインテリジェンスは「人と組織を結ぶインフラとしての人材サービスを提供し、社会発展に貢献する」という「存在意義」を掲げていましたが、インテリジェンスだけでなくその他多くの人材関連企業の成長により20数年前には存在しなかった「人材」という業界が世の中で認識されるようになりました。年齢に関係なく転職することが当時に比べて格段にし易い世の中になったと思います。副業をはじめとして働き方の選択肢も以前に比べて多様になりました。
しかし、そこに至るまでには数多くの人の途方も無い努力や失敗が積み重なっているはずです。「時代の転換点を創る」のは易々と実現できないことを理解した上で、この1年はミッション実現するための基盤を整備することに集中したいと思います。